昨年6月当サイトのトピックスに掲載したコラムのテーマは「今こそ、アサーティブコミュニケーションの実践を」でした。その理由は従業員の『ワークエンゲージメント』を高める要因の1つに「心理的安全性を感じる職場環境」があげられ、それを実現するためのコミュニケーションスタイル、アサーティブコミュニケーション(お互い承認や尊敬しながら意見交換するコミュニケーション)が必須だからです。
そこで今回は、そもそも従業員の『ワークエンゲージメント』を高めることは、組織マネジメントにどのような影響をもたらすのか、を考えてみます。
『ワークエンゲージメント』とは働きやすい、働きがいがあると感じる、ポジティブに仕事と向き合う心理状態を意味し、それは3つの要素で構成されています。
・活力:仕事中のエネルギーレベルが高い状態、低下しても回復がはやい状態
・熱意:意義ややりがいを感じ、深くかかわろうとする状態
・没頭:仕事に集中し、達成感を味わおうとする状態
さらにそれらは「一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である」と定義されています。
『ワークエンゲージメント』の向上によって、個人のパフォーマンスが上がり、組織へのコミットメント(≒貢献)が増大しているという統計データがあります。(スコアやメモリの値の大きさは気になさらないで下さい)
『ワークエンゲージメント』が高い人と低い人の差には個人の資質が関係していることは否めませんが、それよりも帰属組織やチーム、周囲からの動機付けによる影響が大きいと考えられています。
すなわち、会社や職場、周囲から得るものによって
・仕事自体が楽しい、学習する喜び、チャレンジする意欲がわいてくる
・仕事の成果が何かに貢献していると感じる
・自己の成長や将来の可能性を感じる
という心理状態でいることが、『ワークエンゲージメント』が高い状態です。なお仕事上の楽しみや自己成長は他者からの指示によって、感じるものではなく、「次はこんなことをやってみたい」「さらに自分にできることがあるのではないか」という自律性が大きくかかわっています。
つまり、『ワークエンゲージメント』の向上よっては自分で仕事のやり方を考え、自ら問題解決に積極的に関与していく自律性を醸成する効果が期待できます。
一方、次のような負のプレッシャーをうけると『ワークエンゲージメント』は下がります。
・やらないと何か罰をうける、上司に叱られるという威圧感をもつ
・指示どおりに仕事をやりきらないと評価が下がる、給与に影響するという焦燥感がある
・なんとなく仕事をしている、目的やすすむべき方向性が定かではない
特に3番目の状態にある人は経験や年齢に関係なく、結構みうけられるのではないでしょうか?これは仕事に対する動機付けがあいまいであることが原因です。
組織マネジメントにおいて従業員の『ワークエンゲージメント』を向上させるためにはプラスの動機付けを行い、マイナスの動機付けを排除していくことが求められます。
プラスの動機付けができているかどうかをはかる指標の一例を、以下にあげます。
さらに『ワークエンゲージメント』と従業員の定着率は正の相関関係にあるデータも示されています。ワークエンゲージメントを高めることは、退職阻止効果があり、安定的な組織運営に効果があるといえます。(スコアやメモリの値の大きさは気になさらないで下さい)
ちなみに従業員満足度(以下ESサーベイ)と『ワークエンゲージメント』は類似するもの、と理解しがちですが異なるものです。ES調査で満足度が高くても『ワークエンゲージメント』が高いとは限りません。ESとは会社や帰属する組織が提供する方針や制度に対する従業員視点での評価指標(アセスメント)です。片や、ワークエンゲージメント調査は会社や帰属する組織や職場環境が自分にとって働きやすい場であるか、働きがいがあると感じるかをはかる調査です。
従って、
自分にとって働きやすい環境ではないが、給与には満足している
→ESは高い、ワークエンゲージメントは低い
新しい知識は会社の研修では得られず、自己学習しているが、それによって自己成長を感じている
→ESは低い、ワークエンゲージメントは高い
といったケースが想定されます。
従業員の『ワークエンゲージメント』を高めるためには、現在の状況を調査することから始まります。その結果によって評価・報酬制度を変える、人財育成方針を見直す、雇用管理のあり方を刷新するなど、組織マネジメント全般を検証し、状況によっては大きく変革する、ことに至るかもしれません。
『ワークエンゲージメント』を向上させることは、今後の組織マネジメントにおいて重要なテーマであることは間違いありません。
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