昨年12月にこのトピックスで従業員の『副業・兼業』制度について取り上げました。その後従業員の『副業・兼業』制度は各企業でどの程度推進されているのでしょうか?
2018(平成5)年1月に厚生労働省が【副業・兼業の促進に関するガイドライン】を発表して5年以上を経た現在、どの程度の企業が取り組んでいるのか、公益財団法人『産業雇用安定センター』によるアンケート調査結果をもとにこの制度に対する各企業の現在地を推しはかってみたいと思います。
調査対象企業 約7,600社 回答数 約1,000社
調査期間 2023年6月5日~7月31日
回答結果のサマリは以下のとおりです。
(※各表は公益財団法人『産業雇用安定センター』によるアンケート調査結果をもとに弊社で作成)
■自社の従業員の『副業・兼業』を認めているか
・「すでに認めている(予定含む)」「個人事業主として認めている(予定含む)」 48.2%
・「認める予定なし・検討していない」 51.6%
⇒結果からいえること
肯定的な回答とそうでない回答は概ね半数
■自社の従業員の『副業・兼業』を認めているか(従業員規模別)
・「すでに認めている(予定含む)」の割合は5,000人以上企業は約46%、他は30%前後
・「個人事業主として認めている(予定含む)」の割合は1,000人以上と未満で差が大きく、前者は
30%前後、後者は20%未満。従業員規模が大きいほど、割合が大きい
・「認める予定なし」「検討していない」は従業員規模が小さいほど、割合が大きくなる傾向
⇒結果からいえること
『副業・兼業』を認める割合は、必ずしも従業員規模に比例しているとはいえない
■自社の従業員の「副業・兼業」を認める(予定含む)目的
(回答数約1,200の内訳)
・多様な働き方実現 21.1%
・従業員モチベーション向上、自律的キャリア形成 25.9%
・自己実現、セカンドライフへの関心 18.7%
※従業員からみたメリットの追求(上記3つの計) 65.7%
・本業への知識・スキル活用、人材定着、企業イメージ向上など企業からみたメリットの追求
29.8%
⇒結果からいえること
「副業・兼業」制度は従業員から見たメリットを多く認識している企業が多い
■他社の従業員を『副業・兼業』で受け入れているか
・「すでに受け入れている(予定含む)」「個人事業主として受け入れ(予定含む)」 25.7%
・「受け入れる予定なし・検討していない」 74.3%
⇒結果からいえること
受け入れについては肯定的な割合が全体の4分の1に留まり、検討や静観している企業の方が多い
■他社の従業員を『副業・兼業』で受け入れているか(従業員規模別)
・「すでに受け入れている(予定含む)」は規模に関係なく20%未満(5,000人未満は約11%)
・「個人事業主として認める(予定含む)」は5,000人以上の企業は約15%、他は10%に満たない
・「認める予定なし」「検討していない」は規模に関係なく70%前後(5,000人未満は80%以上)
⇒結果からいえること
『副業・兼業』の受け入れに対しては、『副業・兼業』を認める企業よりまだ少ない
■他社の従業員の『副業・兼業』を受け入れる(予定含む)目的
(回答数約500の内訳)
・人材確保 35.0%
・自社の従業員の育成 12.2%
・知識やスキル習得 18.8.%
・自社事業へのメリット(生産性の向上やイノベーション) 24.0%
・その他(複数選択肢計) 10.0%
⇒結果からいえること
概ね従業員数の確保または質の向上に大別できる
■自社従業員の『副業・兼業』を認める、他社従業員の『副業・兼業』を受け入れる 場合の課題
(回答数 約3,500の内訳)
・労務管理 21.3%
・健康管理 15.9%
・本業への支障 14.1%
・機密情報や技術・ノウハウの流出リスク 23.0%
・人材流出リスク 6.9%
・その他(複数選択肢計)18.8%
⇒結果からいえること
管理体制のあり方とリスクマネジメントが大きな課題、と認識されている
以上の調査結果から、従業員の『副業・兼業』制度は活用が広がりつつあり、まず自社の従業員の『副業・兼業』を認めることが先行しいるといえ、他社従業員の受け入れることはまだ慎重に検討している企業が多いと推測されます。
また『副業・兼業』を認める目的の回答数が約1,200に対し、受け入れる目的の回答数はその半数以下の約500、課題の回答数が約3,500という結果からも『副業・兼業』制度を「前向きに推進する」よりも「今しばらく静観」という状況がうかがえます。
『副業・兼業』を認めること、受け入れることは企業の目的や背景にある事情は様々でしょう。
まずはこの制度を設定、活用することの目的と成果指標をしっかり定めることが肝要です。世の中の動向や事例をウオッチしながら、「自社に適した方針やルールをつくっていく」ことがこのテーマへの取り組み方の正攻法といえるのではないでしょうか?
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