5月度コラム「従業員の『ワークエンゲージメント』を考える2」の続編です。今回は『ワークエンゲージメント』スコアが高いグループの中で、ハイパフォーマーという評価を受けている人『ワークエンゲージメント』の傾向について考えます。
ハイパフォーマーの一般的な定義は、
「高度なスキルや業務に関する豊富な知識や多くの知見を有していて、そのことにより高い業績や成果を残せる、人財(※)」です。(※「人財」の表記:企業にとっての資本、財源であるという観点から、「人財」と表記しています)
ハイパフォーマーは企業にとって1人も多く内包して、活躍を期待したい人財です。
初めに当社が行った『ワークエンゲージメント』に関する調査項目を簡単にご説明します。
従業員が会社組織に帰属して働く上で鍵となるカテゴリーを
●職場環境・仕事へのとりくみ・働き方について
●モチベーション向上や成長への支援について
●会社の方針や社風
に分け、カテゴリーごとに10項目、合計30項目について、質問を設定しました。
具体的には以下のとおりです。
●職場環境・仕事へのとりくみ・働き方について
1.職場に活気がある
2.部署やチームは、相談や話しやすい雰囲気である
3.部署やチーム内でコミュニケーションや情報共有が活発に行われている
4.自分の仕事に誇りを感じる
5.自分が持っている知識や経験値、スキルを発揮できる
6.自分の仕事の範囲と責任、目標が明確である
7.改善・改革の提案がしやすい
8.自主性・自立性が重んじられている
9.多様な働き方ができる
10.個々人の働き方について、部署やチーム内の仲間の理解・協力が得られている
●モチベーション向上や成長への支援について
11.部署やチーム内に互いに承認や称賛する雰囲気がある
12.チャレンジできる環境である
13.成果に対して納得できる公正な評価制度がある
14.参加したいイベント(プロジェクト活動、勉強会など)が多い
15.仕事にみあった報酬がもらえる
16.学べる環境がある(知識習得やスキルアップのためのマニュアルや研修が充実)
17.ステップアップの機会がある
18.自分のキャリアステップがイメージできる
19.成果や行動について適宜フィードバックがある
20.上司から権限移譲されている
●会社の方針や社風について
21.経営理念が明示され、全体に共有されている
22.幹部・社員ともに理念を実践または実践にむけて努力している
23.経営・事業方針が明確で全体に共有されている
24.部署ごとの方針・目標が明確で全体に共有されている
25.会社は新たなことにチャレンジしている
26.成長戦略が明確である
27.自社が提供している商品やサービスは市場価値がある
28.ブランドイメージが高い
29.経営幹部の人柄ややり方に好感がもてる
30.職場の規律やマナーが守られている
これらの項目について、エンゲージメントの高さ≒納得度・共感度とし、調査対象者に納得度・共感度を5段階「とても高い・概ね高い・どちらでもない・あまり高くない・全く高くない」で評価してもらいました。回答結果は「どちらでもない」を50点とし、100満点でスコア化しました。
次に、調査企業においてハイパフォーマーに該当する従業員10数名を選定して頂き、該当者のスコアを算出しました。
その結果、カテゴリー別平均はハイパフォーマーグループと企業平均は左記のとおりで、15~20ポイントのひらきがあることがわかりました。
なお前出の30項目のうち、ハイパフォーマーグループのスコア平均値が特に高かった項目は次に5つです。
・部署やチームは相談や話しやすい雰囲気である【職場環境・仕事へのとりくみ・働き方】
・自分が持っている知識や経験値、スキルを発揮できる【職場環境・仕事へのとりくみ・働き方】
・個々人の働き方について、部署やチーム内の仲間の理解・協力が得られている【職場環境・仕事への
とりくみ・働き方】
・チャレンジできる環境である【モチベーション向上や成長への支援】
・会社は新たなことにチャレンジしている【会社の方針や社風】
以上のことから、ハイパフォーマーの高いエンゲージメントには
●自分と帰属組織との間に心理的距離感の近さや一体感をもっている
●自分の活躍の領域が認識でき、貢献していることを自覚している
●自分も会社も新たなことにチャレンジすることで発展や成長を認識している
ことが影響している、といえます。
ハイパフォーマーを1人でも多く輩出し、ローパフォーマーを1人でも少なくすることが、企業における人財育成の命題です。
従業員のポテンシャルを喚起し、ハイパフォーマンスを引き出すためには成長戦略、個人の成長の機会提供、タイムリーな承認と協力、これらが要因の一部であるといえそうです。
ワークエンゲージメントなどのサーベイによって、従業員を知ることから、企業が取り組むべき課題がより鮮明に浮かび上がってきます。またエンゲージメントスコアが高い項目は企業の強みや魅力ですので、それらを客観的に把握することにもつながります。
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