リテンション ~退職を回避させる~

年が改まり、各社、今年あるいは今年度中の取り組みテーマについて始動の時期かと思います。
当サイトの前回(2024年11月)のトピックスでも「目まぐるしくかわる雇用管理」と題して、2025年に取り組みが予定されるテーマの一部をご紹介しました。

今年も依然として継続する重点テーマが人財確保(新規採用、多様化する雇用形態への対応、リテンションなど)ではないでしょうか。益々、加速化する少子化、就労世代の人手不足を考えると人財確保を新規採用に依存するのは不確実です。併せて、今、雇用している従業員の退職をいかに減らしていくか、そのアクションを重ねることが人財確保の大きな要因になりそうです。その中で、今回は「リテンション、退職を回避させる」と題して、退職者を減らし、人財確保を維持するために、企業は何をすべきか施策について、考察してみます。

まず、主な退職理由をみてみましょう。数年前に公表された調査データですが、主な退職理由は以下のとおりです(2017年2月独立行政法人【労働政策研究・研究機構】による調査結果より) 

■「初めて正社員勤務先」を退職した理由上位5項目 (回答数2,200件 複数回答)
 【男性】
  ・労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった(31.8%)
  ・自分がやりたい仕事とは異なる内容だった(28.4%)
  ・キャリアアップするため(28.1%)
  ・賃金の条件がよくなかった(26.9%)
  ・肉体的・精神的に健康を損ねた(26.9%)

 【女性】
  ・結婚・出産(33.8%)
  ・肉体的・精神的に健康を損ねた(29.3%)
  ・労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった(28.7.%)
  ・人間関係がよくなかった(26.5%)
  ・自分がやりたい仕事とは異なる内容だった(20.4%)

男女間に若干の差はあるものの、男女ともに、上位の理由は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」「肉体的・精神的に健康を損ねた」「自分がやりたい仕事とは異なる内容だった」でした。退職者の概ね3人に1人または4人に1人が退職理由にあげています。
上記のうち、男性の「キャリアアップするため」、女性の「結婚・出産」による退職、以外の理由は帰属組織や仕事内容についてに何らかの不満やストレスが退職理由に影響していると考えられます。

では調査結果も勘案して、リテンション施策例をいくつか挙げます。
 ●待遇改善⇒昇給・インセンティブ、福利厚生の充実、休暇を増やす
 ●働きやすい職場環境⇒テレワークやフレックスによるな柔軟な働き方
            心理的安全性のあるチームのコミュニケーション
 ●やりがいのある仕事⇒明確な目標、達成感、組織への貢献
 ●スキルアップ・キャリア形成支援⇒スキルアップ研修、ジョブローテーション、
                  キャリアカウンセリング
これらはワークエンゲージメントを向上させることにプラスの効果が期待できる取り組みです。

一方、就労にとってマイナスの影響がある要因をなくすことによるリテンション効果が考えられます。
その一つがハラスメントの防止であり、撲滅です。ハラスメント対策は先にあげた退職理由の「肉体的・精神的に健康を損ねた」の原因対策にもつながります。

「リテンション=人財確保、退職者を減らす」ためには、従業員の帰属意識を高めるプラス要因を増やし、帰属意識を低下させるマイナス要因を減らすことを並行して実施することが必要ですが、今回はまずマイナス要因を減らす取り組みについて提案致します。
様々なハラスメントのうち、パワハラ、セクハラ、マタハラなど社内で発生するハラスメント対策は、すでに企業方針や対応ルールを示し、社内で周知が進んでいることと想像します。今後はさらに1歩踏み込んで『カスタマーハラスメント』(以下『カスハラ』と略す)についての対策を進めて頂くことを推奨致します。『カスハラ』は文字通り、顧客や取引先(=社外の人)によるハラスメントです。

『カスハラ』対策
については、2022年に厚生労働省が対応マニュアルを公表、東京都が今年4月に条例を施行、といった行政機関の動きが盛んになってきています。それらをうけて、企業では「カスハラお断り」といったメッセージをサイトで発表したり、小売店の店頭や病院の待合室で「カスハラ拒否」告知ポスターを見かけるようになりました。
また諸団体主催の『カスハラ』対策セミナーも増えてきていますので、各企業でも知見を広げつつある状況だと察します。具体的な対策や組織として実施すべきことについては、別の機会で考察するとして、このコラムではその期待効果についてのみ、その一部を以下に列挙します。
 ・従業員の負荷を軽減し、退職理由に影響する原因を排除する効果
 ・『カスハラ』行為者の対応時間のロス軽減効果
 ・メンタルストレスから従業員を守る効果
 ・真の顧客へのサービスに専念する環境づくりの効果
 ・『カスハラ』対策を講じる過程での社内で分散しているナレッジを集約する効果
 ・対応マニュアルをつくる効果
 ・目標(『カスハラ』をなくす)を共有することによるチームの一体化効果

『カスハラ』対策において、経営トップが企業方針を明確に打ち出すこと、必須要件ですが、職場で実施できることや発信できることも多くあります。以上のような期待効果を得るために、リーダーや幹部の方々が率先して、今年の課題の1つとして、取り組まれることを推奨します。

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