『副業・兼業』者の労働時間管理

今後、多くの企業様が対応されるであろう労働者の『副業・兼業』制度、中でも特に注意が必要と思われる労働時間管理について、ポイントを押さえておきます。

そもそも、『副業』とは、自社が雇用している労働者が他の事業者に雇用されることなく、報酬を得る目的で事業や活動を行うことをいい、フリーランス、個人事業主としての活動や起業などがその典型的な例です。これに対し、『兼業』とは自社が雇用している労働者が、他の事業者に雇用されること(以下Aパターンとします)、または他の事業者に雇用されている労働者を自社が雇用すること(以下Bパターンとします)、です。

労働者の『副業・兼業』の取り組み方については、「企業、労働者双方からみた発展や成長のメリットを勘案し、拡大・推進する」という行政の方針に基づき、厚生労働省がガイドラインを策定しています。2018(平成30)年1月に策定され、2020(令和2)年9月の改定を経て、また今年7月に改定されました。

※厚生労働省のガイドライン☛「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定しました (mhlw.go.jp)

ある統計データによると2018年から2021年の3年間で『副業・兼業』を「全面容認・条件付き容認」の企業が約4%増え、55%に至っています。今後、「容認する」企業が増加することは間違いありません。

すでに厚生労働省のガイドラインに基づき、自社の労働者の『副業・兼業』対応を進められている企業様も多いと思いますが、企業が行うべき対応のうち、悩ましいのは労働時間管理と健康管理だとおもわれます。

中でも特に注意が必要なのは上記Bパターンの労働時間管理と健康管理です。新型コロナ感染拡大前は働き手不足のためでBパターンで雇用されている企業(店舗)様が多かったでしょうし、まん延的働き手不足からBパターンでの雇用に依存せざるを得ない企業(店舗)様もあるでしょう。

労働者の1日あたりの労働時間は通算されますので、Bパターンの場合、時間外労働手当を支払うケースが多くなることが考えられます。また健康管理上、過重労働にならないよう、労働者が雇用されている他社での時間外労働と休日労働も含め、合計時間が単月で100時間未満、2ケ月以上の複数月の平均が80時間以下になるよう、時間管理を行う必要があります。

【例】C社に雇用されているDさんを雇用し、C社退勤後、当社で勤務してもらう

<1日あたり>

C社 10時~16時勤務⇒労働時間5時間、休憩1時間

当社 17時~21時勤務⇒労働時間4時間 休憩なし

◎当社に1時間分の時間外労働手当を支払う義務あり

<1ケ月あたり>

C社での時間外労働+休日労働時間が上限45時間の場合

◎当社では時間外労働+休日労働時間が35時間以下になるように管理

※複数月の平均を80時間以下にするためには、どの1ケ月をとっても80時間以下であることが望ましい。

Aパターン労働者に関しても、兼業先での時間外労働と休日労働を含め、同様の時間管理が必要ですが、例のようにBパターンで労働者を雇用する場合、雇用条件設定時に予め労働時間について取り決め、それに基づいて厳密に管理していくことが求められる、といえます。

では実務上、どのように労働時間管理を行うのか?それを簡便に行う1つの方法として、ガイドラインに「管理モデル」が示されています。是非参考になさってください。

企業、労働者双方にメリットがある『副業・兼業』を推進したいが、実務はどのようにすればいいのか、労働時間の「管理モデル」は適切に運用できるのか、など多くの要件について検討し、方針を決めなければなりません。また『副業・兼業』の容認後も、自社の制度について修正や改定を何度か繰り返し、自社と自社の労働者にとって最適な制度にしていく、『副業・兼業』制度はこのようなビジョンのもと、取り組んでいくテーマである、といえるでしょう。

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