先月に続き、「働き方改革」についてもう少し深堀します。
2019年4月の法改正にあわせて、新しい制度やルールをつくったり、措置を施された企業様は多いと思われます。しかしながら、「何のために働き方改革をするのか」「改革をした結果、会社はどうなっていたいのか」といったゴールイメージやそこに至るまでのプロセスは明確でしょうか?
右に倣えと、とにかく新しい制度を施行し、運用でトライアンドエラーを繰り返す、のではなく、「そもそも何のための改革か」「自社にとって働き方改革はどのような価値向上をもたらすのか」といった目指す方向を先に定め、それに沿って改革を進めることこそ改革への第1歩であると考えます。
厚生労働省提供の『働き方・休み方改革取り組み事例集』で紹介されている約20社の目的を一読すると、業種や従業員規模にかかわらず、概ね以下に集約されます。
Aタイプ:自社の体質(長時間労働・休暇の取りにくさ)を改善する
・職場に長くいることを評価しがちだった社風を変える
・長時間労働の常態化を解消し、所定労働時間内で集中して効率的に働く意識を社内に浸透させる
・まん延している長時間労働の解消と特定従業員の過重労働時間を是正する
・部門間にある、休暇の取得状況の格差を是正する
・男性社員も育児休業が当たりまえに取得できる会社にする
・リモートワークしやすい環境を整える(リモートワークによって効率アップする業務がある)
・属人化した業務や仕事の仕方を分解し、だれでも業務がこなせるようにムダを排除、効率化をはかる
・社員が心理的に安心して働ける職場にし、社員のパフォーマンスを向上させる
Bタイプ:自社を改革することで、自社および業界全体のイメージ向上に貢献する
・求職者が応募したい会社にする
・労働環境を改善して、企業のイメージアップにつなげる
・過酷な労働環境を改善し、業界のイメージを上げる
・他業種と同等に休日取得ができる会社になり、同業他社のモデルになる
・長時間労働、過重労働が当たりまえだった業界の慣例を変える
・自社が改革の好事例をつくり、同業他社に発信する
Cタイプ:将来に向けて経営計画を実現させる
・従業員の意見を聴きながら、(全社一律ではなく)部門や職種に適した働き方を確立する
・社員がチャレンジし、自立的に能力を磨いて成長できる働き方ができる会社をめざす
・5ケ年の中期経営計画で「社員と組織の成長を実現し、社員の生活の向上と企業体力の強化を両立」
させる
皆様の企業の目的・ゴールイメージはどれに類似するでしょうか?
さて以上のような目的に達するために、様々な解決手法やプロセスが考えられますが、いくつか例をあげます。
・ノー残業DAYを設定して、定時帰宅を定例化する
・時間外労働は計画的に行い、事前に上司の承認を得て実施する(無計画な時間外労働は認めない)
・残業時間、有給休暇取得率などを数値化し、定期的に社内で発表(行動変化を可視化する)
・マネジメント層から率先して、有給休暇や育児休業や介護休業を取得する
・マルチタスク化によって仕事の効率をアップする(属人性の強い仕事のやり方や業務の見直し)
・勤務時間、勤務日数の選択肢を増やす(変形労働時間制やフレックス制度の運用)
・勤務場所を柔軟に設定する(テレワークが適合する職務や業務の選定し、テレワークを活用)
・時間や勤務期間を算定基礎としない賃金制度の設定
・成果や取り組み実績を評価する制度の構築
・中期経営計画に「働き方改革計画」を盛り込む
以上のように、
まずは従業員1人1人が意識を変え、普段の行動を変えることから始め
⇒業務の効率化をはかることと並行して、人事制度の変更や新しい制度設計といった仕組みを整え
⇒未来志向の経営計画策定と実行
といった長期間にわたる改革を繰り返し、ようやく「働き方改革」が実現するといえるのではないでしょうか?
いずれにしてもスタートは「どのように変革していくのか、その結果、どのような会社でありたいのか」を明らかにすることからです。それは経営者や一部の幹部社員だけでまとめ上げるのではなく、従業員の声を拾いながら決定することが改革をすすめる近道でもあります。なぜなら、従業員1人1人による行動変化が改革の起点となるからです。
また改革の手法や手順はそれぞれの会社に馴染みやすいやり方(ゆるすぎず、飛躍しすぎず)を選択し、じっくり社内に浸透させること、が肝要であることは言うまでもありません。
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